日本で事業を行う上で、勝ち抜くための妙薬はありません。注意深く耳を傾け、誠心誠意説明し、正しい決定を辛抱強く待つ。できることはそれだけです。

何年も前のことですが、ある偶然の出来事がきっかけで、日本企業と仕事をする上で忘れられない教訓を得たことがあります。

米国のある法律事務所が、私が勤務していたeディスカバリ企業に、日本のクライアントにプレゼンテーションをしてほしいと依頼してきました。その法律事務所はそのクライアントとすでに数カ月仕事をしており、情報開示手続について話をする段階にさしかかっていました。そして公平を期すため、複数のeディスカバリ業者にプレゼンテーションを依頼したのです。

このクライアントは知財案件で初めて原告になったところで、経営陣には少し緊張感がありました。私たちはクライアントの懸念事項に耳を傾け、自分の会社について手短に説明し、質問に答えました。

休憩時間中のことです。日本人の経営幹部が何人か私たちのところにやって来て、思いがけない依頼をしてきました。米国の法律事務所ともっとうまくやり取りができるよう助けてほしいというのです。そして弁護士は自分たちの話に耳を傾けようとせず、ひたすら一方的に物事を進めていこうとすると不平をもらしました。

私たちは驚きました。びっくり仰天したといってもいいくらいです。私たちのような候補業者が2時間も経たないうちに信頼を勝ち取ることに成功し、法律事務所とのやり取りの手助けをしてほしいと頼まれたからです。この信頼はクライアントの話に耳を傾け、対話することによって得られたのです。

残念ながら日本企業からこうした不満を聞いたのは、これが最初でも最後でもありませんでした。

本記事では、eディスカバリ業界における日本と米国の商習慣の大きな違いについていくつか指摘したいと思います。本記事はこの点に関する徹底的な報告ではなく、2つの国のビジネスについてよく取り上げられるテーマについて概略を述べることを意図したものです。

人を重視

日本で重要なのは、ビジネスだけではありません。人が重要なのです。

読者の皆さんはこのような話を耳にされたことがあるはずです。アメリカ人は仕事で個人的な感情を見せない傾向があるのに対し、日本人は取引先の人を理解するために時間をかける傾向があります。

アメリカ人を非難するためにこのようなことを言っているのではありません。むしろその反対で、ビジネスのスタイルの違いを指摘することが私の意図するところなのです。人がなぜそのような行動を取るのかが理解できれば、その人のふるまいを予測することができるという話を、ある教授から聞いたことがあります。その教授は実際に、長年にわたって日本人とのビジネスにこの考え方を用いて成功しています。

このことはeディスカバリとどんな関係があるのでしょうか? その直接的な理由については後ほど述べますが、日本でeディスカバリに関わろうとしている法律事務所や業者が最初に行うべきことは、日本企業との仕事の進め方について理解することです。この点について非常によく書かれた本がいくつかあります。私は30年以上も日本で仕事をし、10年近くeディスカバリにどっぷり浸かって、この教訓を学びました。

ビジネススタイルの違い

「私と仕事をしたいなら私のやり方に従ってもらう」と豪語する人と何度出会ったことでしょうか。そこまで言い切る人はあまりいなかったかもしれませんが、そう言おうとしていることは明確でした。こうした一方的なビジネスのアプローチは、場所を問わず、長期的な利益をもたらすことはないようです。

私は取引先の人の人となりをよく知るというやり方を好みます。その糸口としては、日本企業と米国企業の基本的な違いを理解することから始めるのがよいでしょう。

1. 信頼関係

一般に、アメリカ人は一番よい条件で商談をまとめることだけに関心があります。商談の相手はそれほど重要ではなく、取引の内容の方が重要なのです。一方、日本人は信頼に基づく関係を構築することに関心があります。相手が信頼のおける人だと判断して初めて、取引の内容が重要性を持つのです。

これは何を意味しているのでしょうか? 見込み客の人となりをよく知っておく必要があるということです。クライアントにとって何が重要なのかを知ろうとしてください。クライアントの声に耳を傾けてください。クライアントと一緒に食事をしてください。クライアントに対する理解を深めるための質問をしてください。クライアントの質問に答えて、自分たちのことを理解してもらってください。

クライアントの信頼を得ることができたかどうか、どうすればわかるのでしょうか? クライアントはあなた自身やあなたの会社の事業を理解するために、具体的な質問をし始めます。そして信頼が深まるにつれて、自分の会社やその事業について自ら進んで情報を提供してくれるようになります。こうしてお互いの信頼関係が築かれるのです。

2. 一心同体の関係

日本人の集団思考的精神構造についてはよく知られています。日本人が個人より集団を大切に考えるというのは本当です。アメリカ人は個人を優先し、独自に思考する傾向があります。

日本企業の集団思考的精神構造によって、他人同士が心を通わせ、意思疎通の頻度が高い人脈が生成されます。企業社会の中にはこうした事例が広範囲にみてとれます。会社は規模の大小にかかわらず、会社自体を1つの全体的な単位とみなします。日本の企業文化の特徴は、人脈がたくさんあること、人と人のつながりが多いこと、コミュニケーションが頻繁であることです。

一方、米国企業は企業を独立した個人や法人の寄せ集めと見なす傾向があります。1社のグローバル企業であっても、様々な事業部や地域拠点を性質の異なる個別の事業とみなします。

3. 慎重に検討

米国企業ではスピードが仕事の推進力になることがよくあります。本来なら昨日契約すべきだったのだから、今すぐ署名して、販売もできるだけ早く、といった調子です。調査はあわただしく、決定は迅速に行われます。遅れが発生するのは、例外なく取引の実施段階に入ってからです。何ヵ月も、ときには何年も引き延ばされることがあります。

日本企業は正反対です。調査や計画の段階では、注意深く慎重です。取引に至るまでに時間をかけ検討します。準備に長い時間をかけるので、いざ実施するとなると仕事はとても早く進みます。

したがって、一概には言えませんが、日本と米国の商習慣の大きな違いは次のようにまとめることができます。

  1. 日本企業はまず信頼関係を構築してから取引の交渉に入ることを好む傾向がある。米国企業はまず取引の内容に関心をもち、内容が決まってから関係を構築する傾向がある。
  2. 日本企業の従業員は本社の同意なしに仕事上の決定をしようとしない。交渉の場で個人が決定を下すことは無く、会社の承認を待ちます。米国企業は打ち合わせに1人の「意思決定者」を送り、1~2回の打ち合わせで取引をまとめようとすることが多い。こうしたやり方は多くの場合、日本人には無謀に映る。
  3. 日本企業は方向性の決定や準備にはかなり時間をかけるが、決定事項の遂行には時間をかけない。米国企業は決定には時間がかからなくても、その遂行に時間がかかることが多い。

一般論に過ぎませんが、企業文化の違いを理解する手がかりにはなります。

日本におけるeディスカバリへの影響

訴訟を進んで受け入れる日本企業はあまり多くありません。訴訟は通常、よくても気晴らし程度に思われており、最悪の場合、重要な経営資源の垂れ流しとみなされます。さらに、内容の如何にかかわらず、訴訟は恥ずべきものだという見方があります。恥の文化において、訴訟は企業スキャンダル同然なのです。

日本企業に係争中の訴訟向けサービスを紹介しようとすると、なぜ訴訟があるのを知っているのかと驚かれ、米国ではそうした情報が公開されていると伝えると呆れられることがよくあります。

訴訟が日本で商習慣として受け入れられた(しかも不本意ながら)のはごく最近のことだということを、ぜひとも理解しておいてください。日本の通常のビジネスモデルの一部ではないのです。言い換えれば、日本企業にとっては異質なものなのです。アメリカ人は、「誰が」、「何を」、「どのように」、「いつ」などをうんざりするほど説明できますが、日本人は「なぜ」の時点でまだもがいているのです。日本人は訴訟のように公の場で争うよりも、内々に交渉して和解するという方法を好みます。

しかしながら、注目すべき例外があります。一部の日本企業は訴訟を戦略的ツールとして利用し始めており、そのことは日本企業が進みつつある方向性をよく示しています。

一部の日本企業が米国の裁判制度において、子会社を通じて日本国内の競合先を訴えているのを、弊社は幾度となく目にしています。戦略としての訴訟の利用方法を発見したのです。知的財産の保護においては、訴訟は解決の常套手段とまではいかないにしても、重要な構成要素となっています。

学んだ教訓

日本のビジネスモデルを理解することは、私たちのeディスカバリ事業にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

私たちは人間関係を構築することから始めます。既存の人脈をたどって相手の会社から信頼されている人物を探し、見込み客を紹介してもらうのです。これは簡単なことではありません。さらに、過去に一緒に仕事をしたことのある米国の法律事務所と密接な関係を維持することにも努めています。

鍵を握っているのは、相手に信頼されている人物から紹介してもらうことです。過去に商取引で大失敗をしたことがあると、相当な時間をかけて懸命に努力しなければ、日本で再び尊敬を勝ち取ることはできません。ですから、最初にじっくり時間をかけて調査を行ってください。誠心誠意仕事をすることで、自分の評判を維持してください。

もう1つの教訓は時間です。日本企業は訴訟が避けられないことを受け入れるまでに、また社内で方向性が決まるまでに時間がかかるということを頭に入れておいてください。「根回し」と呼ばれる事前交渉のプロセスはそもそも時間がかかるものですが、訴訟という不愉快な出来事を取り扱う場合はなおさらです。辛抱強く待ってください。

最後のポイントは、2つ目のポイントの延長線上にあり、1つ目のポイントにも大きく当てはまります。私たちは気づきました。見込み客と辛抱強く関係を構築し、意思決定の土台になる詳細な情報をクライアントに提供し、会社が決定を下すことができるようになるまで辛抱強く待つことによって、好ましい仕事の受注につながる新しい関係が生み出されるのです。

妙薬はない

あるクライアントから、あなたの会社の見積もりは他社と比べ最安値ではなかったと聞かされ、驚いたことがあります。私は上手く交渉し、徹底した低価格で受注したのだと思っていました。ところがそうではなかったのです。このクライアントは私たちの会社を信頼し、選んでくれたのです。

日本での事業で勝ち抜くための妙薬はありません。すべては注意深く耳を傾け、誠心誠意説明し、正しい決定を辛抱強く待てるかどうかにかかっています。相応の時間をかけてクライアントのことをよく理解して、初めてそこにたどり着くことができるのです。

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