内部通報制度に関する認証制度について

2018年秋ごろをめどに導入予定~

消費者庁が、本年5月、内部通報制度に関する新たな認証制度として、本年秋頃をめどに、「自己適合宣言制度」を導入し、その運用状況を踏まえつつ2019年度以降に「第三者認証制度」を導入予定であることを発表したことは記憶に新しいところです。

この認証制度の具体的な審査基準の案は、内部通報制度に関する認証制度検討会による「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」の別添資料(「審査基準の概要イメージ案」)に示されており、現在のところ合計44項目が挙げられています。その多くは内部通報制度の基本に立ち戻ったものであり、2016年12月に改正されたガイドライン[1]と重なる内容も多く見られる一方で、比較的新しい取り組みも含まれています。

認証制度の導入は、企業の皆様にとって、さらなる実効性向上のために自社の内部通報制度を見直すとても良いきっかけになるのではないかと考えています。

そこで、今回は、消費者庁によれば2018年秋頃めどと導入予定が迫ったこのタイミングで、認証制度の概要を改めてご紹介するとともに、これまで小職が様々な企業・組織の皆様からご相談を受けてきた経験から得た内部通報制度についての展望について述べたいとおもいます。

1.内部通報認証制度の概要

(1)「自己適合宣言制度」(第1フェーズ)と「第三者認証」(第2フェーズ)

二段構えの制度導入となる予定で、自ら審査基準に適合していることを宣言する制度を第1フェーズとし、第三者評価機関による認証は第2フェーズで導入されることになっています。

認証制度の全体構成のイメージは、以下の図のとおりとされています。

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(出典: 内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)[2](平成30年4月 内部通報制度に関する認証制度検討会))

実効性の高い内部通報制度を持っていることが、分り易く認識されるように一定のシンボルマークを設けるのが適切と考えられています。

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(出典:内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)(平成30年4月 内部通報制度に関する認証制度検討会))

(2)審査基準に関する考え方

上述のとおり、審査基準の概要のイメージ案が、消費者庁のウェブサイトに示されています(http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/research/study/review_meeting_001/pdf/review_meeting_001_180501_0002.pdf)。審査基準自体は、「通し番号1~38」の38項目に加えて、「通し番号39~44」の「より進んだ取組を目指す事業者向けの取組項目」の6項目の合計44項目が示されており、上記ウェブサイトの資料に分り易くまとめられていますので、ここで再掲はしません。

また、今後、審査基準を固めていくにあたっての考え方も「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」で示されており、重要な点は大要以下のとおりです。

  • 各事業者の実情、実態に応じた制度設計を念頭に置く
  • 複数の内部通報制度を有している場合は別個に審査される
  • 制度の継続的な維持改善を期してPDCAサイクルを意識する
  • 一部の取組みについては当面の間は任意の取組項目とする
  • 子会社や取引先の制度整備をも視野に入れる
  • 従業員からの信頼性の向上を重視する

審査基準に基づく評価がなされるときに裏付けとなる資料(エビデンス)のイメージも上記報告書の別添資料に示されています。

(3)認証制度の制度設計の見通し

「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」においては、認証制度の信頼性を確保するために自己適合宣言については登録の有効期間を1年に、三者認証については登録の有効期間を2年とする方向が示されています。

また、今後、不正な申請防止のための施策、審査主体の質の担保、審査員の育成、申請の裏付けとなる必要書類等について、具体的な検討がなされることになっています。

2.認証制度を契機とした内部通報制度の見直し

我が国の内部通報制度は、制度を導入するというフェーズから、導入した制度をいかに実効的に運用していくかというフェーズに移っています。それは消費者庁が公表しているアンケート結果にも表れていますし、小職が依頼者の方からのご相談を受けている肌感覚としても感じることです。

内部通報に関する企業の方のお悩みは様々ですが、大きく二つに分けられます。一つ目は、そもそも現場まで周知が行き届いていない、悩み・不満のはけ口となっているという類型で、「内部通報が(正確に)知られていない」という問題意識といえましょう。こうした場合には、たとえば、

  1. 朝礼や研修会での告知といった「点」とポスターやポータルサイトでの継続掲示といった「線」の両輪で周知をしていくこと
  2. 周知資料の情報量を少なめにして分り易くすること
  3. 窓口を複数化し適切な窓口に適切な内容の通報がいくようにある程度の導線を引くことなど、各社の特色に応じた対応策を打っていくことになります。

お悩みの二つ目の類型は、周知はしっかりしているのだけれども通報制度の利用が少ない、従業員に心理的抵抗があるという類型で、あえて言えば「内部通報を使ってもらえない」という問題意識といえましょう。こうした場合には、たとえば、

  1. 退職者や取引先などに利用者の範囲を広げる
  2. 通報手段のバリエーションや時間帯を広げ、使い勝手を向上させる
  3. より安心感のある通報者保護策を導入する
  4. 内部通報をしづらい社内風土の原因を改める
  5. 窓口担当者のプロフィールなども周知する(特に外部窓口の場合)

など、やはり具体的なお悩みに応じた対応をしていくことになります。

多くの不正・不祥事が日本企業を襲う中、内部通報制度は、不正・不祥事の早期・自己発見による柔軟な対応を可能とするための有効な手段です。どれほど直接的な影響があるかは今後の制度運用を見極める必要がありますが、日本版司法取引が開始されたことにより、役職員や取引先が捜査機関に対して企業の内部情報を提供するインセンティブが増している中、企業が自ら不正・不祥事を早期に発見できる手段としての内部通報制度の重要性は増しています。

こうした中、認証制度の審査基準は、自社の内部通報制度を見直す際の良きチェックリストになります。認証制度が始まれば、自己適合宣言、第三者認証に至ることがステークホールダーに対するアピールとなりプラスですが、仮にそこに至らなくても審査基準を制度見直しの一つのきっかけにすることができるのです。内部通報制度導入が済み、その問題認識・課題解決が行われている段階にある多くの企業において、認証制度をきっかけに、内部通報についてのさらなる見直し作業が行われ、様々な場面で意見交換がなされることでノウハウが蓄積され、実務上の工夫・改善が生まれていくことが期待されます。

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[1] 「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/private/system/pdf/minkan_shikumi_161213_0002.pdf

[2] http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/research/study/review_meeting_001/pdf/review_meeting_001_180501_0001.pdf

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