アンドリュー・ペック治安判事が法廷におけるTAR使用について議論

テクノロジー支援型レビューの使用を認める史上初の判決を出した米国治安判事のアンドリュー・J・ペック氏が先日、Legal Talk Networkのポッドキャスト番組Digital Detectivesにゲスト出演し、司会役でSensei Enterprisesの社長を務めるシャロン・D・ネルソン氏と副社長を務めるジョン・W・シメック氏から、TARの仕組みやどんな事例に向くのか、法廷でどのようにして受け入れられようとしているのかについてインタビューを受けました。

ペック判事がTARの普及に主導的な役割を果たしていることから、同氏の発言は本ブログの読者にとって興味深いのではないかと思われます。おかげさまでシャロン氏、ジョン氏、そしてLegal Talk Networkの了承を得ることができましたので、以下に番組内でペック判事がTARについて話している部分を抄録します。番組の全容はSoundcloudプレーヤーをご利用の上、Legal Talk Networkでお聞きください。

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シャロン・ネルソン: 米国連邦民事訴訟規則の改正案に関してよいニュースがありますが、それについてお話しいただけますか?

ペック判事: 手続が始まったのはかなり前で、4月29日のことですが、最高裁が規則の改正案を議会に送りました。議会を無事に通過すれば、規則と改正案は2015年12月1日に発効します。過去に議会で否決されたことはありませんので、通過はほぼ100%確実で、今年の12月1日に発効することになるでしょう。

ジョン・シメック: TARというのはどんなものなのかということを手短にお話しいただいてもよろしいでしょうか。

アンドリュー・ペック治安判事

アンドリュー・ペック治安判事

ペック判事: TARというのは現状ではいちばん通りのよい名前のようですが、これはテクノロジー支援型レビューの略称で、レビューのもつ人間的な側面を忘れないようにするために、人手による作業とコンピュータの作業を組み合わせたものです。基本的には人間のレビュー担当者がコンピュータシステムの訓練を行い、コンピュータはそれを利用して、自分が学んだ内容を、多い場合には何百万点という電子文書にあてはめていきます。ここで電子文書というのは、Eメールなど電子的な方法で保管されている情報のことです。

おそらく例として一番わかりやすいのは、ネットで音楽を購入する人やアマゾンで買い物をする人にはお馴染みの、商品を購入すると次にこれも買いませんか、というおすすめのメッセージが表示されるサービスでしょう。例えばシャーロック・ホームズ選集を買った人は、アガサ・クリスティやそれに類する作品の購入をすすめられます。次にその人が追加購入をすると、気楽に読める刑事事件もののミステリーより探偵小説が好きなのだということがわかって、今度はその分野の本の購入をすすめられます。パンドラという音楽配信サービスもこれと同じようなやり方をします。視聴者がビリー・ジョエルの曲を聞き始めると、このサイトはエルトン・ジョンらの曲をすすめてきます。

コンピュータは閲覧者がどんなものを好きなのかということを知れば知るほど、そうした表示の内容を絞り込むことができるようになります。TARの仕組みも、実質的にはこれと同じです。レビューの訓練を行う際、いわゆるシード文書というものがあって、レビュー担当者がこれに開示事項との関連の有無をコード付けし、その結果がコンピュータにフィードバックされます。するとコンピュータとTARの様々なモデルのいずれかが関連文書である可能性の高い文書を探し出してきて、「これでどうでしょう?」と尋ねます。そこでそれに対して再びコード付けが行われ、システムの訓練がさらに進みます。あるいは別のモデルでは、コンピュータが関連性の有無が曖昧な文書を選び出して、「今までに学習した分では、これらの文書のコード付けは無理です。この中からもう少しコード付けして、システムをうまく訓練できるようにしてください」と言い、そのプロセスが続いていきます。その結果、極端な場合だとレビュー担当者が全文書の10%か20%しかレビューしないうちに、残りの文書は開示の必要がないと言える場合があります。そのため、最終的にはその分の費用や時間が節減できるのです。

シャロン・ネルソン: 2015年3月に出されたRio Tintoの見解書には、「判例法が形成され、開示側当事者が文書レビューにTARを使用したいと望んだ場合、裁判所がそれを許可するのが今や基本的法原則となっている」という文言があります。これは連邦裁判所の訴訟すべてにあてはまるとお考えですか? また州裁判所についてはどうですか?

ペック判事: その文言は現時点では実質的に世界各国で妥当性をもっています。この分野の最新判決はアイルランド高裁がIrish Bank関連訴訟で今年3月3日に出したものですが、その中で同高裁は私のDa Silva Mooreにおける見解やその他情報を追認して、アイルランドでTARを利用することを認めました。同国の制度では開示事項に関連する情報はすべて開示しなければならないことになっているのにもかかわらずです。同時案の判事は、TARを利用しても必要な情報がすべて発見できない可能性が高いが、それは他の方法でも同じことであり、TARは他のどの方法よりも優れているということを認めました。

私が見てきた訴訟は、いずれも連邦裁判所か州裁判所かに関わりなく、開示側当事者、すなわち開示要求に応える側の当事者がプレディクティブ・コーディングやTARといった用語で呼ばれるテクノロジーの利用を望んだ場合、裁判所はそれを認めました。連邦裁判所ばかりではありません。私のDa Silva Mooreに続く2例目の判決はバージニア州ラウドンの巡回裁判所が出したGlobal Aerospaceの判決ですが、やはりTARの使用を認めました。

もう1つ興味深い判例は、デラウェア州衡平法裁判所がEORHB訴訟、通称「Hooters訴訟」で出した判決です。同裁判では副裁判長のラスター氏が棄却すべき反対動機に関し、およそ60数ページにわたる口頭弁論の聴取を行いました。同氏はその最後に裁定を下し、両当事者に対し、もしTARを使用しなかったのならその理由を示すように命じました。

最近出た判決の中でさらに興味深いものの一つに、2014年9月にDynamo Holdingsの訴訟で出たものがあります。この訴訟では租税裁判官が「訴訟の当事者が当職にTARの使用を認めるよう要請するのは少し奇妙だ。なぜなら、不要な書類がたくさん作成されていた頃は誰も当職にどの審査担当者に文書審査を依頼すべきか、担当者の訓練はどんな方法で行えばよいかなどと尋ねにこなかったからだ。」同裁判官は続けて、TARが租税裁判所で問題になったのは初めてなので、慎重に判断し、同訴訟における使用を許可したと述べました。

TARの使用が認められなかったのは、いずれかの当事者がキーワード検索を行ってから手作業でレビューを行うと約束したのに、作業が途中まで進んでからTARに切り替えようとした場合だけです。ある裁判官が言ったように、これは川を渡る途中で馬を乗り換えるようなものです。それ以外は、裁判所は例外なくTARの使用を認めています。

ごくまれな例ですが、情報の開示を求めた側の当事者が相手側当事者にTARの使用を強制しようとした事例で、裁判所はそれを却下し、「相手側当事者はTARを使用する必要はない」という裁定を下しました。問題はTARの使用が妥当性をもつかどうかであって、最善の方法であるか否かではありません。しかし一種の注釈ではありますが、私が集めた事例のうち3件では、開示側当事者は既にキーワード検索を行うか、あるいは最初にキーワード検索で開示文書を選別しておいてからTARを使用するという折衷手法に100万ドル以上の費用をかけていました。したがって、裁判所はこう裁定しました。「これまで十分な費用をかけてきたので、もう1度そうする必要はない。」

しかし検討すべき問題はまだ残されています。将来的に、情報開示を求めた側の当事者が裁判の初日、すなわち開示側当事者がまだ1銭も費用をかけていないうちにTARの使用を求めたらどうなるか、ということです。今はまだそんなことはないかもしれません。しかし5年後なら、おそらく裁判所はこう判断するでしょう。「TARはかかる費用が最も少ない開示手段なので、その使用を義務づける。あるいは、少なくとも使用するか否かの判断を当事者にまかせる代わりに、最も効率的な手法を使用しなかった為に手作業でレビューを行う費用、あるいはキーワード検索と手作業でレビューを行う費用が多額に上ったという不服申し立ては受けつけない。」

ジョン・シメック: TARツールの訓練を適切に行うためのよい方法が全然ないという悩みをよく耳にします。また、TARの効率に不満で、訴訟案件の専門家にレビューを依頼すべきだという人もいますし、実務上はレビュー担当チームに依頼してもよいという人もいます。こうした不満についてどう思いますか? あるいはどうすれば解決できると思いますか?

ペック判事: TARの揺籃期には、パートナーやシニア・アソシエートなど、いわゆる訴訟案件の専門家が今よりはるかに多くの作業をしなければなりませんでした。レビュー担当者の数も、1人か、多くても2人に限定する必要がありました。TARというものは、ツールの訓練に一貫性が欠けていると安定化しにくいからです。

私の考えでは、今は技術が向上したので、訴訟の範囲がどこからどこまでかということを明確に知ってさえいれば、また訓練が十分にできてさえいれば、レビューを行うのは訴訟案件の専門家でもいいし、レビュー担当者でも構いません。つまり、何度もフィードバックを行っているうちにシステムが安定してくるので、あるいは継続能動学習では訓練が継続的な開示業務の一部に組み込まれているので、どちらがレビューを行うかはあまり重要ではないのです。

確かに、私はいまだにSedona Cooperationの声明には妥当性があり、両当事者は可能なら開示文書の抽出方法に関して協力し合うべきだと考えています。しかし協力しなかったとしても、あるいはできなかったとしても、確実に言えることが1つあります。TARに対して、キーワード検索や手作業によるレビューに設定しているものと違う基準、あるいはそれより高い基準を適用してはならない、ということです。基準を高くすると、両当事者が効力の点でもコスト効率の点でも最も優れた分析手法を使用したがらなくなるからです。

最終的な成果をみれば、誰でも訓練がうまくいったかどうかを判断することができます。一般的には、開示対象からもれてしまったように見える特定の主要文書があります。それを分析することを私はギャップ分析と呼んでいます。訴訟に関係する重要人物が突如として1ヵ月も発言しなくなっていれば、おそらく何か問題が起きているはずです。最後に関連文書の捕獲率と精度に関する統計をみれば、抽出作業がどの程度うまくいったかがわかるのです。両当事者の協力は望ましいことですが、たとえお互いに協力できなかったとしても、システムを訓練する方法についても、レビューの最後に成果が十分かどうかを判断する方法についても、他の方法があるのです。

シャロン・ネルソン: TARを使用する際に、訓練に使用するシード文書を選定するにはどんな方法が最もよいと思われますか? ランダムに選ぶというやり方でしょうか? 以前それを検討したのですが、どうも最善の方法ではないようでした。選定の際に、担当者がそのやり方に精通している必要はあるのですか? 判明している主要カストディアンと話をすると役に立つということはありませんか?

ペック判事: おっしゃる通りだと思います。知らないうちに何かを見落としてしまわないようにするためには、おそらくランダムさが必要です。シード文書にはそれほど必要ないかもしれませんが、比較対象文書には必要です。収集文書の中にどの程度の関連文書が含まれているかを調べるためです。しかしその比率は10%未満でしかないことが多いので、100点もの文書をみても訴訟と関連があって開示すべき文書が1点しか見つからないのでは、システムの訓練にとってあまり有用だとはいえません。

おそらくシード文書に対する接し方として最もふさわしいのは厳しい接し方だと思います。しかも実はこれは、不都合な点のないまま一種の透明性というか連携性を得られる接し方なのです。相手側当事者に、他のどんなキーワードで検索をして開示が必要な文書を探してほしいか聞いてみてください。これはそうしたキーワード検索で不要な文書を取り除くということではありませんし、そのキーワードで開示が必要な文書をすべて探し出すということでもありません。そのキーワードを使って文書全体の中からいくつかを選び出し、シード文書として使うということなのです。さらに、文書のカストディアンがどんな頭字語や略語を使っている可能性があるかを知るための唯一の方法は、おそらく本人に聞くことです。現在市場で販売中のある製品が開発時には「プロジェクト・レッド」とか「コード・レッド」のような呼称で呼ばれていたということがわからなければ、それに関する文書を見つけることはできません。したがって、善良で昔気質の弁護士たちがしてきた作業は、シード文書を選び出すうえでとても有用なのです。

ジョン・シメック: 訴訟がどのくらいの規模になればTARの使用がふさわしいのでしょうか?

ペック判事: Eメールが50,000通以上あると、TARの使用がふさわしいということを示す統計がいくつかあります。TARを使用するために業者に支払う費用の額と、キーワード検索と手作業によるレビューを組み合わせて行った場合にかかる費用、あるいはさらにキーワード検索による選別を行わずにすべてを手作業でレビューした場合に費用に外部の弁護士か事務所内のアソシエートのレビュー作業の所要時間×その時給を加えた額を釣り合ったものにする必要があります。メールの数が50,000通以上に達する場合、キーワード検索と手作業によるレビューを組み合わせて行う場合にかかる費用の方がTARの利用料より高額である場合がほとんどで、しかもTARの方が煩雑さが少なくてすみます。

 

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