不祥事調査担当者のための分かりやすい原因分析・再発防止策作成の手引き

1.はじめに

ひとたび自社で不正・不祥事が発覚すると、社内の担当者は、数週間から数か月の間、通常業務の傍ら、こうした不祥事対応に従事することになります。調査自体もかなりの負担ですが、調査が終わった後に待っている報告書作成についても、そう多く経験する業務ではないこともあってか、悪戦苦闘している担当者は多いように感じます。

そこで、今回は、担当者を悩ませがちな原因分析・再発防止策の作成手順についてまとめ、「何を書いたらいいのか分からない!」という担当者のお悩みを少しでも解消したいと思います。 Continue reading

2019年テクノロジー支援型レビューに何が起きるのか

本稿の初出はLaw360の2019年1月3日付け記事です。

2018年はテクノロジー支援型レビュー(TAR)が転換点を迎えた年として記憶されることになるでしょう。TARの使用が可能なのか否かという議論はほぼ終わり、関心はTARをどう使用するかという点に移りました。この疑問には2つの側面があります。訴訟の分野で問題となるのは、TARの成果をこと細かく分析すべきなのか、だとしたらどの程度まで細かく分析して、TARを利用したレビューの実施基準について議論を進めるべきなのか、という点です。訴訟以外の分野では、関心の的はTARに代わるテクノロジーと法務の世界において、TARの別の用途を見つけ出すことへと移ってきました。 Continue reading

火の無い所に煙は立たぬ! 社内調査で知的財産を保護するには

企業秘密はきわめて貴重な資産で、当然ながら絶対に守られるべきものです。そして一部の業界、例えば医薬品、バイオテクノロジー、医療機器、ソフトウェア開発といった業界は、企業秘密漏洩の危険性がとりわけ高いのが実情です。長年にわたる努力と投資で手にした研究開発の成果も、携帯端末やUSBメモリにコピーで持ち出す、あるいはEメールや個人のクラウドサービス、SNSのアカウントから外部に転送、開示することができます。いずれにせよ、それはライバル企業の手に渡ることになるのです。 Continue reading

テクノロジー支援型レビューの最大の弱点はそれを使う人間なのでしょうか?

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10月中旬に知人のマイケル・クアルタラロが「ABOVE THE LAW」に記事を投稿(原文英語)し、テクノロジー支援型レビュー(TAR)の最大の弱点はそれを使用する人間にあるのではないか、という疑問を投げかけました。マイケルはそれが事実なのか否かについて考えを述べるだけで、明確には答えを示しませんでした。そんなわけで、筆者は以下のような疑問を呈さなければなりません Continue reading

相次ぐ品質・データ偽装問題から学ぶ平時からの予防策

blog_jan_2019ここ数年、企業における品質・データ偽装問題の発覚が相次いできましたが、残念ながら2018年も例外ではありませんでした。

この問題は、製造業を中心にしてはいますが、しかるべき資格を持たずに役務を提供するようなパターンを想定して頂ければお分かりのとおり、製造業以外の業種においても他人事ではありません。

そこで、本稿では、相次ぐ品質・データ偽装問題を契機として、不正・不祥事と向き合う社内の議論の活発化に繋げて頂くことを期して、この問題に有効な以下の3つの予防策について論じたいと思います12Continue reading

コンプライアンス調査における文書レビューの最適化、パート2

最新の分析機能と継続能動学習を使い「否定的命題を証明する」には

この記事は内部調査や規制当局による調査のコンプライアンス管理に使用される文書レビュー手法を取り上げた2部立て記事のパート2です。パート1ではコンプライアンス調査の目標達成に向けて効果的な文書レビューを行うための手順をいくつかご紹介しました。そこで今回は要開示文書が存在しないということを統計的確実性で証明するため、つまり実質的に否定的命題を証明するための方法論について概説します。

「否定的命題を証明」することの意味

コンプライアンス調査の目的とは、ほとんどの場合、何らかのまとまったパターンを示す出来事を記述した重要文書を素早く探し出し、インタビューを効果的に行うために必要な要因を収集することにあります。そうした場合、文書は目的を達成するための手段に過ぎません。 Continue reading

コンプライアンス調査における文書レビューの最適化、パート1

多くの企業では、訴訟でもコンプライアンス調査でも、同じ人々が、同じ技術、同じアプローチ方法で行っています。しかしながら、社内調査やコンプライアンス調査における電子情報の管理の手法と、訴訟における手法とは異なっているはずです。

コンプライアンス調査に関する議論の大半は、社員インタビューの計画と実施に関するベストプラクティスに焦点を合わせたものです。この記事では、文書レビュー、特に電子文書レビューを対象としています。文書レビューは、それらのインタビューをコントロールし調査の多くの部分を構成するための、「自白剤」となりそうな要因を見つけるための調査プロセスの一環で、インタビューの計画や実施と同じくらい重要な要素となります。

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証券訴訟―不祥事の後に企業を待ち受ける新たな脅威

blog_legal_icons本Blogでは普段、企業不祥事の予防や有事対応に関するトピックを取り上げていますが、今回は少し視点を変えて、有事対応が一段落した後に生じる民事責任の問題、とりわけ投資家が企業に対して起こす損害賠償請求訴訟(証券訴訟)を取り上げてみます1

1 証券訴訟とは何か

長らく、企業において不祥事が発生した場合に、株主との関係で企業が真っ先に心配しなければならないのは株主代表訴訟であると考えられてきました。実際、近年でも、株主代表訴訟の年間の訴訟提起件数は、50〜100件と高止まりしており、役員の大きな脅威となっていることはたしかです。 Continue reading

内部通報制度に関する認証制度について

2018年秋ごろをめどに導入予定~

消費者庁が、本年5月、内部通報制度に関する新たな認証制度として、本年秋頃をめどに、「自己適合宣言制度」を導入し、その運用状況を踏まえつつ2019年度以降に「第三者認証制度」を導入予定であることを発表したことは記憶に新しいところです。

この認証制度の具体的な審査基準の案は、内部通報制度に関する認証制度検討会による「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」の別添資料(「審査基準の概要イメージ案」)に示されており、現在のところ合計44項目が挙げられています。その多くは内部通報制度の基本に立ち戻ったものであり、2016年12月に改正されたガイドライン[1]と重なる内容も多く見られる一方で、比較的新しい取り組みも含まれています。 Continue reading

リニア談合事件で改めて注目される平時からのメールモニタリングと社内リニエンシー制度

Catalyst_Five_Steps_to_Better_Oversight1 はじめに

リニア中央新幹線建設工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部は平成30年3月23日、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、大手ゼネコン4社とその役職員2名を起訴しました。民間発注工事の談合で刑事責任が問われるのは初めてのことであり、そのこと自体も注目に値しますが、企業の危機管理を考える上で参考となるのは起訴された各企業が公表した再発防止策です。

新聞報道などでは、起訴された企業の一社が今回の起訴を受けて策定した再発防止策1(以下「本再発防止策」といいます。)が、同業者がいたら同窓会などであっても参加ができないとする非常に厳格な同業者との接触ルールを定めるものとして話題になっていましたが、本稿では、その点ではなく、再発防止策の中でもやや耳慣れない①内部監査部門による平時からのメールモニタリングと、②内部通報に関する社内リニエンシー制度を取り上げたいと思います2Continue reading